名古屋入管に収容されていたスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(33)が3月に死亡した問題で、出入国在留管理庁は最終報告書を発表したが、死因などはまだ明らかになっていない。遺族代理人の弁護士らは、ウィシュマさんの収容中の医療や処遇に関する状況を調べるため、名古屋入管に対して5月、行政文書の開示請求をした。その結果、ほぼ全て黒塗りの文書、約1万5千枚が送られてきた。弁護士らは8月17日、この文書を報道陣に公開し、遺族とともに会見を開いた。【 BuzzFeed Japan / 冨田すみれ子】
参議院議員会館(東京都千代田区)の会議室の壁いっぱいに貼られたのは、黒塗りされた名古屋入管からの文書。全部で段ボール3箱分ある。
大半は、ウィシュマさんが収容されていた名古屋入管の看守勤務日誌で、ほかは被収容者面会簿、診療結果報告書などだ。
黒塗りされていない箇所はタイトルなどのみの状態だ。
遺族代理人の指宿昭一弁護士は「この真っ黒の紙は、入管の闇を現している」と指摘する。
「意味のある記載部分は、全て黒塗りされています。秘密主義もここまでくると、もう冗談のようです。入管は全てブラックボックスにいれて、情報を隠したがる。調査報告書に記載していることすら、真っ黒でだしてきました」
「これが国として、行政として、正しい姿なんでしょうか。2007年以降、17名の方が入管施設で亡くなった。入管は全く反省していないと思います」
黒塗りの文書を見て、ウィシュマさんの妹のワヨミさんは「真っ黒にされていることで、入管が隠したいことが表れていると思います。ビデオも2時間に編集されていました。入管が姉を殺してしまったということが、明らかになっていると感じます」と話した。
遺族代理人弁護士らは4月9日、名古屋入管に保存されているとみられる、ウィシュマさんに関する医療関係・処遇関係の書類等の引き渡しを求めた。すると入管は文書の引き渡しを拒否し、行政文書開示請求をするよう求めた。
それを受け、弁護士は5月に名古屋入管に行政文書の開示請求を行い、8月2日に黒塗りの文書を受け取った。
開示実施手数料には15万6760円がかかったという。
名古屋入管はこれらの情報を開示できずに黒塗りにした理由として「公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある」「当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」などとしている。
調査報告書は、今回黒塗りで送られてきた看守勤務日誌を基礎としている。
弁護士らは、最終報告書を「情報のごく一部を都合よく切り張りしたもの」だと指摘する。
高橋済弁護士は「黒塗りされた文書は、編集されたビデオと全く同じ状態。動かぬ証拠であるビデオでさえ、報告書と違う内容がある」「恣意的に切り取られているのか、いないのかということが、このままでは分からない状態です」と話す。
遺族がずっと開示を求めているウィシュマさんが収容されていた部屋の監視カメラ映像に関しては、2週間分の映像を2時間に編集した短縮版が8月12日に遺族のみに公開された。
遺族はこの日、2時間分の映像を見るために法務省を訪れたが、その内容に衝撃を受け、体調を崩し、途中で中断した。
残りの映像は後日、日程を調節して見ることになっているが、弁護士などの立ち会いを求める予定という。
遺族は映像を見た後に報道陣に対し「姉を助けることができたのに。映像で姉は犬のような扱い方をされていました」「お姉さんは殺されました」とし、こう話していた。
「このビデオは全ての人にとって大切です。ここに人道は全くありません。全ての外国人が見るべきです。姉がこういうことになった。明日はあなたかもしれない」
「ここ(入管)で働く人には人の心がない。人間の扱いではありませんでした」
遺族は、入管が2時間に編集した短縮版のみを公開していることに対し「自分たちの都合のいいことしか見せていない」として、すべての映像を公開するよう引き続き求めている。
指宿弁護士は「入管は、徹底して自分に不都合なことは隠している。ビデオの編集や黒塗り文書は、入管の隠蔽体質を表している」と指摘する。
指宿弁護士は引き続き、死亡当日を含めた2週間分の映像開示を求める姿勢を示している。
映像公開をめぐっては、オンライン署名も立ち上げられ、8月13日にはビデオ開示と再発防止を求める5万筆の署名が入管庁に提出された。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e3ac4edcae6014fdaf02bbc0791f70ad44d680c9?page=2