三重県と四日市が後援し市制施行123年周年記念事業として多額の補助金が交付される“県民まつり”イベントに、複数の統一教会(天の父母様聖会・世界平和統一家庭連合/家庭連合)フロント組織が関わっていることが判った。イベントの主要実行委員はこのフロント組織の関係者で占められており、実質的に教団関連組織が主導しているとみられる。実行委員には教団と関係の深い地方議員や元県会議長、全国的な婦人団体の幹部も含まれている。イベント事務局及び三重県と四日市市を取材した。
「県民まつり」に統一教会フロント組織の影
問題のイベントは11月29日に四日市文化会館で開催される『ファイト三重!県民まつり』なる催し。三重県、四日市市の他に統一教会のフロント組織である三重県平和大使協議会、そして三重県地域婦人団体連絡協議会と一般社団法人100歳大学が後援に名を連ね、主催者名義は『ファイト三重!県民まつり』実行委員会となっている。〈参照:ファイト三重!県民まつり〉
この実行委員会の主要メンバーに、統一教会フロント組織の関係者や関連政治家が多数含まれている。
元政治家では、実行委員長の永田正巳元三重県議会議長が三重県平和大使協議会の共同議長。実行委員の梶田淑子元名張市議は三重県地域婦人団体連絡協議会会長・全地婦連副会長で、やはり三重県平和大使協議会の共同議長だ。梶田元市議に関しては、教団系メディアであるSunday世界日報の2018年12月2日号にインタビュー記事が掲載されるなど以前からその関係性が指摘されていた。
教団系幹部の実行委員では、安井邦彦三重県平和大使協議会議長がやはり教団フロント組織・世界平和連合の議長を兼任。安井氏はこれまで統一教会本体では本部復興局長・第8地区長・三重教区長を経て現在、鈴鹿家庭教会教会長に就いている。柴田浩也三重県平和大使協議会事務局長は世界平和連合三重事務局長を兼任。生川猛雄氏は教団フロント組織・FPU平和統一聯合、橋本裕輝氏は教団フロント組織・世界平和青年学生連合(YSP)のそれぞれ三重事務局長に就いている。
現役政治家(地方議員)では以下の4人の実行委員に教団系組織やプロジェクトとの関係が発覚している。
石田成生自民党三重県議と市川哲夫鈴鹿市議はピースロード三重2019と日韓トンネル合同イベントに出席。渡辺(渡邉)清司自民党桑名市議はピースロード三重2020共同実行委員長で2019年の平和大使協議会総会に出席。前野和美自民党三重県議は2020年7月に日韓トンネル推進三重県民会議および三重県平和大使協議会主催の役員研修会に出席した。
プログラムにも教団フロント組織のステージ
『ファイト三重!県民まつり』には、世界平和青年学生連合(YSP)が行うミライメーカープロジェクト三重による「提言発表」もプログラムに組まれている。
ミライメーカーが昨年9月に行った清掃ボランティア活動には大村秀章愛知県知事が参加、自身のTwitterにおいて宣伝まで行った。大村知事の浅慮なツイートはフロント組織側に引用リツイートされ拍付けに使われた。大村知事はその翌月に愛知県国際展示場AICHI SKY EXPOで韓鶴子総裁を主賓に教団が開催した4万人信者集会へ祝電を贈っている。
〈参照:HBOL|“統一教会”の国際会議に自民党国会議員大量出席、清和会会長が来賓として講演〉
四日市市が後援と補助金、三重県は後援
『ファイト三重!県民まつり』は四日市市の市政施行123周年「市民企画イベント」事業として補助金の交付が決まっており、四日市市のHPや市報にもイベント情報が掲載されている。
弁護士団体が指摘していた公的機関利用の問題点
統一教会と公的機関の関係性という観点からみると、直近では昨年12月に神奈川県内の公的施設で開かれた「統一教会因縁トーク」講演会問題が記憶に新しい。調査と是正を自治体へ申し入れた全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は申入書の中で統一教会について「反社会的勢力とも言うべき、極めて問題のある特定宗教団体」と言及しており、この件を今年6月に報じた神奈川新聞は同教団を「霊感商法や違法な勧誘などが問題になっている(中略)団体」と指摘した。
〈参照:神奈川新聞|旧統一教会、公的施設で講演会 弁護士ら調査申し入れ〉
情報提供を兼ねて11月11日と12日、四日市市と三重県の担当部署に電話取材を行った。神奈川新聞の報道内容を伝えた上で、一般的に見てそのような社会的評価がなされている教団のフロント組織が関与するイベントを三重県や四日市市が後援し、補助金を交付することへの見解を質した。
補助金交付を認可した四日市市の政策推進課によると、補助金の額は経費の2/3で上限は100万円。個別の交付金額の公表は差し控えているという。
「申請の段階で要綱上宗教団体には補助金は出せない。ヒアリングさせてもらった上で四日市市のPRに努めるということで補助の対象になった」
統一教会フロント組織の関与は把握していないと答える担当者。
「要綱に抵触しないかということは確認したが、そこまでは認識していない。実行委員会としてご提示、宗教団体ではなかった。申請書プラスアルファでヒアリング等、要綱を満たしているか審査した」
「内容が要綱上、宗教だと補助対象外になり得る」
統一教会の関連組織だと認識できていれば対応は違っていたのか、補助金交付の取り消しについては「教会の団体名で来ていれば…」「実施まで期間があるのでその辺は…」と明言を避けた。
イベントの後援を認可した市の観光交流課にも当てた。担当者は後援の審査についてこう経緯を明かした。
「実行委員会から申請があった。事業内容が『シティプロモーション』や『郷土愛醸成』だったので観光交流課で後援名義を受け付けた」
実行委員会からは当日配布するプログラムに印刷するためとして、市長や県知事からの応援メッセージ提供の要請があったという。三重県の鈴木英敬知事も、愛知県の大村知事と同様に昨年10月の教団4万人集会へ祝電を贈っている。
〈参照:HBOL|“統一教会”の国際会議に自民党国会議員大量出席、清和会会長が来賓として講演〉
統一教会フロント組織の関与が明白となれば後援の取り消しはあるのか。担当者は「主催は実行委員会」と答えるのみ。その委員会に教団フロント組織関係者が多数散見されることについては「政策推進課からいただいた補助金申請書にはそういう団体の方がそこまで関わっているとは(記載がない)。宗教性というのは判らない」と弁明した。
反社会的と指摘される宗教団体の関連組織が実質的・主体的に関わっているとなった場合、市としてどう対応するのかと追及すると、ようやく「反社であるとかに代表されるが、そういう場合であれば当然しかるべき対応というのはありますね」と含みを持たせた。但し「123年の記念事業は審査委員会で精査しているので、後援を出さないということは基本ない」とし、今後の判断については政策推進課と歩調を合わせるという。
「政策推進課と話をして補助金の取り下げという方向性があれば当然我々も後援しない」
同じく後援を認可した三重県庁の地域支援課は、経緯と今後の対応についてこう答えた。
「実行委員会として申請を受け、内容について地域活動を支援するイベントとのことで、平和大使協議会云々よりも申請いただいた実行委員会の申請内容で判断した。今後の対応は上と協議する」
いずれも、日を改めて今後の対応について確認することとなった。
実行委員は「存じ上げないです」の一点張り
11日夜、実行委員会事務局の問い合わせ先となっている矢田真佐美実行委員(鈴亀女性会会長)に電話取材を行った。
市に提出した予算を「100万ちょっと」「後で経費を精算」と話す矢田氏、市民の税金を原資とする補助金は70万円程度が交付されることになるようだ。
平和大使協議会が統一教会の関連組織だということについて「いえ、存じ上げてないです」と答えた矢田氏。自身も統一教会の関係者ではないとし、イベントの宗教性を否定した。
「事業としては宗教的なこととは関係がない」
イベントの企画立てについて「実行委員の皆さんの構想の中で立ち上がってきた内容」と話す矢田氏に最初の発起人を尋ねると、そもそもの発案者は矢田氏自身だと明かした。
「言い出しっぺというか私なんですけどね。県婦連の方からも共感した内容の中で実行委員会が立ち上がってきた」
平和大使協議会が関与してきた経緯については「ああ、永田先生」と元三重県議会議長である『県民まつり』実行委員長/三重県平和大使協議会共同議長の名を挙げた。
統一教会関連の人物が実行委員にかなり入っていることについても“存じ上げていない”と答える矢田氏。教団フロント組織が主導するイベントではないのかと問うと、三重県平和大使協議会はあくまで後援団体の一つに過ぎないと強調した。
「少しでも多くの団体が後援に入ってくれたほうがいいので」
統一教会の関連団体が首を突っ込んでくるのは有難迷惑ではないのかと訊いてみたが「県民まつりの中身そのものがそういったものに何もクローズアップしてないので、あまりそこに特化していただかなくても」と歯切れが悪い。
当日ステージで提言発表を行うミライメーカーも統一教会系の活動だと指摘したが「三さんプロジェクトといって、地域の取り組みの中で…」と弁明。しかし、その「三世代・三さん運動プロジェクト」も、やはり統一教会系の世界平和青年学生連合(YSP)によるものだ。
「企画内容から危惧されるようなことは持っていないので」「梶田先生や永田先生も四日市が会場取れたので実行委員長になってくれた」「ここまで準備してきているので戻れない」
困惑気味に語る矢田氏。統一教会フロント組織の関係者を排除するつもりはないのか訊くと、今さらできないという。
「それはもう永田先生が実行委員長をしていただいているので、私からはできません」
さらに、矢田氏は、筆者による三重県や四日市市への取材活動について抗議し始めた。
「県や市に問い合わせるというのは困ります」
何か変だ。そこで、市への補助金申請を行うイベントであるならば尚のこと関与するのがどんな団体なのか調べるべきだったのではないかと尋ねたところ、矢田氏は前言を微妙に変化させた。
「(平和大使協議会は)言い出しっぺの一人。企画と運営のところで打ち合わせてきて、そういった要素を言われたり進言されたりしたことはなかった」
平和大使協議会の背景を調べなかった理由として三重県婦連会長の名を挙げて弁明する矢田氏。
「私は県婦連の梶田会長の下でいろんな人とご縁がありますのに、そんなこと思ってもみてないです」
近日公開予定の後編では、イベント事務局担当者の弁明の矛盾点、三重県と四日市市の呆れた対応、疑惑を裏付ける他の後援団体関係者による証言、そして全国弁連の弁護士からの重大な指摘について記載する。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e0288440a26d8459b0199c76c6356f7fb2121e64?page=1