「書類上の不備はなかった」。十八日に会見した三重大の幹部は、男性の架空請求を見抜けなかった理由を、こう説明した。
会見した三重大や八神製作所によると、不正に関与した男性は同社の津営業所に勤務。約二十年間、三重大病院だけを任されていた。同大を担当する社員八人のうち最も年長で、社内や病院関係者の評判は高く、病院内の各診療科に医療機器の部品を納入したり、修理をしたりしていた。
二〇〇五~一六年の十一年間で、男性は計三百六十五回にわたって架空請求を繰り返していた。三重大側はなぜ不正に気付けなかったのか。会見によると、不正に関係した発注額は一度に数万~数十万円と金額が少なく、いずれも随意契約だった。
男性は、実際には購入していない医療機器の部品などの領収書を自宅のパソコンで偽造。会社から代金を横領し、三重大病院には、品物の空き箱を納入していたという。
病院幹部は「箱の中身を調べるなどのチェックはしていなかった」と打ち明ける。機器の修理内容も、請求書と照らし合わせて調べたりはしていなかった。男性は架空請求で得た金を使って、鈴鹿市内のスナックで飲み歩くなど、遊興費に充てていたという。
大学によると、三重大病院の医療機器の取引を含む昨年度の予算は約二百億円(人件費は除く)。来院する県内の患者の治療費と、文科省の予算などが原資で、八神を含め約三十の納入業者などと取引がある。同大によると、八神製作所との昨年度の取引額は十三億円超に上る。
今回の架空請求問題を受け、大学側は修理した医療機器の内容を確かめるために、医療技術者を立ち会わせるといった再発防止策を講じた。
昨年十二月十五日付で八神製作所を八カ月間の指名停止とし、全国の国立大に処分を通知。東大や静岡大など全国四つの国立大が同社を指名停止にするなど影響が広がった。
しかし、多額の不正請求が横行していた事実を知りながら、八神製作所と三重大ともに公表していなかった。八神側は「上場企業ではなく、納入した機器で、感染などの健康被害がないため公表しなかった」と弁明。大学側は「事態の精査に時間がかかり、早期の公表まで思いが至らなかった」と説明した。
十八日の会見前、本紙が大学側に問い合わせた際、広報部門を統括する企画総務部の幹部は「大学内の病院と、財務部門から詳しい情報を知らされていない」と回答した。
処分の事実を積極的に明らかにしなかった八神製作所と三重大。両者の「内向きの論理」は、三重大病院を利用する県民らにどう映ったか。
(池内琢)
http://www.chunichi.co.jp/article/mie/20170119/CK2017011902000029.html?ref=lcrk
http://www.peeep.us/fce23d7a
0 件のコメント:
コメントを投稿