シャープ亀山工場(亀山市)で多くの雇い止めが発覚し外国人労働者の立場の弱さが改めて浮き彫りになっている。外国人労働者受け入れ拡大を図る改正入管難民法が八日に成立したことを受け、亀山市などはしわ寄せが地方に来るとして国の支援を求める一方、足元の雇い止めされた住民への具体的な支援策を打ち出していない。多文化共生に向けた自治体の姿勢も問われている。
「なぜ、相談に来てと言わないのか。人ごとのようだ」。十一日の亀山市議会本会議で一般質問した服部孝規議員(共産)は市の対応をただした。
答弁で市側は、雇い止めされた外国人に相談を呼び掛けるといった対応をしなかったことを明らかにした。桜井義之市長は「今後は情報収集をして広く相談体制を敷きたい」と述べたが、具体案には踏み込まなかった。
亀山市周辺の他自治体でも、今回の大量雇い止め発覚を受け、改めて外国人住民に積極的に相談の呼び掛けをした例はない。四日市市多文化共生推進室の担当者は「雇用は市が直接解決できる問題でない。大々的に相談を呼び掛けることが難しかった」と説明する。
一方、自治体側には外国人支援の負担を背負わされてきたとの不満もある。一九九〇年の入管難民法改正で県内に外国人が急増した際、各自治体は就労支援だけでなく、日本語教育やごみ出しルールの周知など幅広く取り組んだ。四日市市の担当者は「日常生活の支援は地方に丸投げされてきた」と実態を打ち明けた。
こうした経緯もあり亀山と四日市、鈴鹿、津、伊賀の県内五市をはじめ、外国人住民が多い全国十五市町でつくる「外国人集住都市会議」は十一月、外国人労働者の受け入れに伴う支援策の充実を求める意見書を国に提出した。「中長期的な共生施策を伴わない外国人材の受け入れ拡大は、地域社会に大きな混乱を招く」と訴えた。
ただ、雇い止めされた外国人労働者が加わる労働組合「ユニオンみえ」(津市)の広岡法浄(ほうじょう)書記長は「外国人を単なる働き手でなく同じ人間として働けるシステムをつくるべきだ」と今回の法改正を批判。その上で「自治体も外国人を同じ市民の一員として受け入れるべきだ」と国任せの自治体の姿勢にも疑問を呈した。
外国人を支援するNPO法人ハートピア三重(四日市市)の佐野優理事長は「国や企業の協力なしに地方自治体だけで対応するのは難しい」と自治体の現状に一定の理解を示す一方、「外国人の出身地の多様化を想定し通訳の種類を増やすなど自治体も準備をする必要がある」と指摘した。
(渡辺雄紀、吉川翔大)
雇い止め問題は、十二日の県議会常任委員会でも取り上げられた。委員の議員から「報道されている雇い止めの数と県が把握する内容が大きく違う」「職を失った外国人への対応が必要」などの声が上がった。
県には三月と七月、三重労働局から連絡があり、「シャープ亀山工場で計七百五十人の雇い止めがあった」との情報が寄せられたが、十一月末に報道で明らかになるまで、実態を調査していなかった。
県は条例に基づく補助金を活用し亀山工場を誘致したことから、立地に伴う経済波及効果を毎年調べており、十二日の委員会では本年度分の調査結果を報告。五月一日現在で、亀山工場や直接取引をする計二十二社の雇用者数は前年同期比百人減の八千三百人と、大きな変化がなかったという。議員から説明を求められた県側は「毎年決まった時期に調べているため、調査の間に雇い止めがあった可能性がある」との見方を示した。
詳しい状況を把握するため県はシャープに情報提供を求めており、新たに立ち上げた対策チームが就労支援や生活相談といった対応を検討する。
補助金は亀山工場が操業を始めた二〇〇四年度~本年度で計九十億円を分割して県が支払うことになっており、本年度分の二億円も予定通り来年三月に支払う考えも示した。
(鈴鹿雄大)
http://www.chunichi.co.jp/article/mie/20181213/CK2018121302000026.html