なぜ、韓国人はフィリピンで殺害されるのか。韓国政府も対策に乗り出しているが、今のところ思うような成果は挙っていないようだ。
2015年12月20日、フィリピン中部のマラル市で建設業を営む50代の韓国人男性が同居していた女性と宿舎の寝室にいたところを4人組の男に襲われた。
男たちは金品を奪って車で逃走しようとしたが、1人の男が宿舎に引き返し、韓国人男性に銃弾を放って殺害した。
■女子留学生も殺害
2015年10月2日にはフィリピンのマニラ近郊に住む50代男性と40代女性の韓国系夫婦が自宅で銃撃されて死んでいるのが見つかった。
現地の警察は外部から自宅に侵入した形跡がないことから、顔見知りによる犯行の可能性があるとみているという。
犯罪の対象となる韓国人も現地で事業に携わる企業家や移住した人などさまざまだ。2014年3月にはマニラで20代半ばの女子留学生が拉致される事件が発生した。
女子留学生は約1カ月後に遺体で見つかり、韓国社会に衝撃を与えた。女子留学生は友人に会うためにタクシーに乗って移動していたところを拉致された。
■わずか3年で8倍増
韓国外務省がまとめた資料によると、2013年に海外で韓国人を標的とした犯罪が最も多かったのがフィリピンで780件に上る。2010年には94件だったのが、2013年には8倍以上にもなったことになる。
ちなみに2012年では中国が759件と最も多く、フィリピンは628件だった。
殺人に絞ってみてもフィリピンで韓国人を対象にした事件が多発していることが分かる。2013年から2015年にかけて海外で殺害された韓国人は79人だが、そのうちフィリピンで殺された韓国人は31人で全体の約40%にもなる。
フィリピンに滞在する韓国人は約9万人で、年間の訪問客も2011年には約85万人だったのが、今では100万人を超えている。
フィリピンは英語が通じて、物価も比較的安いため、社会の第一線を退いた後、移住先に選ぼうとする韓国人は多いという。
■「韓国人は裕福」
では、韓国人はなぜ標的になるのか。フィリピンでは韓流ブームなどの浸透で、「韓国人は裕福だ」という印象が強い。つまり、金目当てだ。
また、現地では対韓感情があまりよくないケースもあるという。買春目的でフィリピンを訪れる中高年男性もいるほか、海外ということもあって高圧的な態度で接することがあり、反発を招く。
また、フィリピンでは海外に出稼ぎに行く労働者の送金が経済を支える柱の一つとなっているが、外国人労働者として韓国で働いているうちに、印象が悪化。そのうち帰国してしまい、嫌韓感情がぬぐい去れないままになっていることもあるという。
■警官装って近づく
フィリピンは銃が比較的、容易に入手できる「銃社会」であることに加えて、拉致などの手口が非常に巧妙化している。中には警察を装って近づいてくるケースもある。
2014年8月にマニラで起きたケースでは40代の韓国人が街頭でタバコをくわえたところ、警官の服を着たフィリピン人男性が「公共の場所でタバコを吸った。警察署に連れて行く」といって、この韓国人を車の中に連れ込んで金品を奪った。
被害に遭った韓国人は、車が信号で停まった機会をつかまえて車外に逃げ出したという。
フィリピンで発生した韓国人を狙った犯罪を取材した韓国メディアの担当者は「フィリピンには日本人や中国人もいるのに、韓国人をうまく見分けて犯罪の標的にしている」と感想を漏らしている。
フィリピンで起きる韓国人殺害事件の多くは金銭トラブルが原因と考えられており、韓国政府はフィリピン政府や警察当局に対して、韓国人の安全対策強化を申し入れている。
■コリアンデスク設置
韓国政府は2014年4月にフィリピンに職員を派遣し、フィリピン警察で韓国人関連の事件を担当する「コリアンデスク」の設置を支援するなど対策を取っている。
また、韓国外務省の担当者は総領事館の追加設置を検討することを明らかにしている。
しかし、事件は後を絶たない。こうした中、現地の韓国人が食堂や事務所を多く構えているマニラのマラテ地区では自警組織を編成し、専用の派出所を設けるなど自衛に乗り出している。
http://www.sankei.com/west/news/160117/wst1601170032-n1.html
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